エールブランディング株式会社

1億人総メディア時代の危機管理広報——SNSは「発信の場」であると同時に「リスクの場」

少し前は、企業の評判を左右するのはテレビ・新聞・雑誌といったマスメディアだけでした。
記者が取材し、編集者が判断し、記事になったり、放映されたり。
企業側にも、準備する時間や、対応する時間がありました。

でも今は違います。

スマートフォンを持つ人すべてが、情報の発信者です。1億人を超えるユーザーがそれぞれのSNSアカウントを持ち、いつでも・どこでも・誰でも情報を世界に向けて発信できる。企業にとって都合の悪い出来事は、数分で拡散し、数時間で炎上し、翌朝にはニュースになっている——そういう時代に、私たちは生きています。

この環境において、企業の危機管理広報は根本から考え直す必要があると思っています。

今日はSNSに重点をおいて、お話をお届けします。

「正しいか間違っているか」はSNS炎上に関係ない

多くの経営者が陥る誤解があります。
それは「うちは正しいことをしているから炎上しない」という思い込みです。

しかし炎上は、事実の正確さとは別のところで起きます。
炎上するのは、「多くの人が不快に感じる文脈」に触れたとき。

法的に問題がなくても、倫理的に問題がなくても、「なんとなく感じが悪い」「この会社の態度が気に入らない」という感情的な反応が連鎖したとき、炎上は起きます。

少し注意が必要だなぁと感じるのは、経営者個人のSNS発信。

以外ですか?いやいや、あなたの社長は大丈夫ですか??

企業の公式アカウントは広報担当やSNS担当の方がルールに則って頑張っている人が多いですが、経営者の個人のアカウントとかはノータッチではないですか?

「社長だから大丈夫」

そんな思い込みで、社長個人が好きなことを発していると、企業にとって重大なリスクの発生源になりかねません。

また、日々の行動・言動にも注意が必要です。以前、運転中のヤジを動画に撮られ、その動画を拡散された社長がいましたよね。。。

また、退職者による発信もご注意ください。見落としがちな「退職者リスク」

在職中の従業員へのSNS教育は行っている企業でも、退職後のリスク管理は手薄なことが多いと思います。でも、退職者が業務上知り得た情報をSNSに投稿するケースは、実際に起きています。

守秘義務は退職後も継続します。しかしそれを従業員に明示し、退職時にきちんと確認するプロセスを持っている企業はまだ少ない。SNSガイドラインは、在職者だけでなく退職者も対象に含めて設計する必要があります。

炎上したとき、やってはいけない3つのこと

炎上したら、「反論・削除要求・感情的な対応」は絶対に避けてください。

SNSで批判を受けたとき、経営者が最もやりがちなのが「反論」です。

「それは事実と違う」「誹謗中傷だ」と公の場で言い争う——これは、ほぼ確実に状況を悪化させます。

批判者との言い争いは、注目を集めます。注目が集まれば、より多くの人がその騒動を見に来る。そして多くの場合、「企業対個人」の構図で、企業側が批判される側になります。どれだけ正論を言っていても、「大きな組織が個人を叩いている」という印象は覆せません。

削除要求も同様です。批判的な投稿の削除を求めることが「情報隠蔽」と受け取られ、さらに大きな炎上につながった事例は枚挙にいとまがありません。

「何もしない」ことへの恐怖から、動いてしまう経営者がいます。しかし状況によっては、慌てて声明を出すより、静観することが最善の対応であるケースも多い。

重要なのは「意図的な沈黙」と「放置」は違うということです。専門家と相談しながら、状況を注視し、適切なタイミングで適切な言葉を出す——これが危機管理広報の実際の動きです。

SNSリスクを下げる「平時の仕組み」

じゃ、どうしたらいいのかというと、起きる前の仕組みです。

起きてから慌てるのがいちばんのリスクです。起きたあとに、助けを求められると、私たちも倍大変ですし、正直、費用もかなりかかってきます。

ですから、「何も起きていない時にしっかり準備しておきましょう」ということなんです。

  • SNSガイドラインの策定

従業員がSNSを使う際のルールを明文化することは、今や経営上の必須事項です。ガイドラインには少なくとも以下の要素が必要です。

個人情報・顧客情報の取り扱い(業種によっては特に厳格な管理が必要です)、内部情報の口外禁止(会議資料・人事情報・トラブル事例など)、リアルタイム投稿のリスク、退職後も守秘義務が継続すること——これらをガイドラインとして整備し、入社時・定期的な研修で周知することを徹底してください。

  • 投稿前の「リスク感度」を組織に埋め込む

ガイドラインを作るだけでは不十分です。「これを投稿してよいか」と立ち止まれる文化を、組織の中に育てることが重要です。

そのためには研修が有効です。年に1度でかまりません。

実際の炎上事例を素材に「なぜこれが問題になったか」を考える研修は、ルールの暗記ではなく、リスク感度の醸成につながります。

弊社では、弁護士やメディア関係者と弊社(広報の専門家)が一緒に研修を行うことで、法的な視点と広報的な視点の両方を学ぶことができます。

  • 経営者自身のSNS発信を見直す

前述した通り、経営者個人のSNS発信も、企業の広報リスクと直結します。個人の発言であっても、企業の代表としての発言と受け取られるからです。

特に、競合・業界・社会的な問題に関する発言は慎重さが必要です。本人には正当な意見表明のつもりでも、文脈を知らない人が見れば別の意味に取られることがあります。発信する前に「この投稿が炎上したとして、会社にどんな影響があるか」を一度考える習慣が、大きなリスクを防ぎます。

広報さんはぜひ社長に物申してくださいね!

1億人総メディア時代において、企業のSNSリスクをゼロにすることはできません。しかし、リスクを最小化し、万が一の際に冷静に対応できる体制を整えることは、今すぐできます。

SNSガイドラインの策定、定期的な研修の実施、経営者自身の発信の見直し——これらは大きな費用をかけずに着手できることです。そして何より大切なのは、「問題が起きてから考える」から「平時から備える」へと、経営者の意識を切り替えることです。

SNSは、企業の魅力を発信する場でもあり、最大のリスクの場でもある。その両面を正しく理解した上で、戦略的に活用することが、これからの経営者に求められています。